断ることは難しい1 ~一般編~
人から何かを頼まれた時に、きちんと「断る」ことはできますか?
自分が何かを人に頼んだ時、嫌な断り方をされたことはありませんか?
人を大切に、そして自分も大切にする表現である「アサーション」(コミュニケーションスキルの一つ)では、上司からの依頼をきちんと断ることを練習します。
この「断り方」は、意外と難しいのではないでしょうか?
ビジネスシーンで説明するより、とても分かりやすい事例がありましたのでご紹介します。
テレビ番組の「芸能人が喫茶店でいきなりファンに写真を撮られたら、どういう反応をするか」というドッキリ企画で、意外にもとても感動したシーンがありました。

明るくてハキハキした女の子です。
ドッキリの舞台である、喫茶店に入ってきました。
私は、彼女なら明るくて若いし、仕掛人の撮影攻めにも、きっと「OKで~す」なんて気軽に対応するか、嫌がってスタスタと帰ってしまうかな?と予想していました。
キャピキャピし、少し離れた席から写真を
撮り始めます。


タレントAさんは耐え切れず、飲み物を一気に飲み干して席を立ちました。
私は、予想どおり、お店をスタスタと出ていくと思っていました。
しかし、タレントAさんは、仕掛人Bさんの席で立ち止まり、

と、仕掛人に伝えました。
そして、その後にこんな言葉を続けました。

空気が和らいだ瞬間です。
こんなに若い女の子が、嫌なことを断るときに「私」を主語にして伝え、その後に「相手」を大切に思う譲歩案を提示しています。
私はこのシーンにとても感動し、周りのいろいろな人に伝えています。
これが、自分も相手も大切にする「アサーティブ」な表現なのです。
大切にするって何を?
相手の「意見」と自分の「意見」
相手の「気持ち」と自分の「気持ち」です。
■ 意見が対立して攻撃的になる ⇒ 相手の「意見」を大切にしていない。
自分と相手が相互に認め合い、双方が相手と自分の「意見」と「気持ち」を大切にすることで、意見を言い合える関係となり、さらに良い「意見」にまとめることができます。
断れない、断り方が分からないという方は、自分の意見を大切にせず、さらには相手「気持ち」も大切にしていないことに着目しましょう。
相手の依頼(希望)を断る時
今回の事例を元に、ドッキリの企画ではなく、普通のタレントAさんとファンBさんという設定で検証していきましょう。
① ファンBさんは好き勝手にタレントAさんの写真を撮っています。
タレントAさんの「意見」をまったく考えていません。
【ファンBさんの行動の理由】
- 会えたことがうれしい
- 写真を撮りたい
- 会ったことの証明が欲しい
- その写真を自慢したい

② それに対して、Aさんは「私はとても嫌な気持ちがしました」と言いました。
「やめてください!」と言った時の場合と比較してみましょう。

【ファンBさんの気持ち】
- 注意された。
- 非難された。
- ハッキリ言うわね。
- ちょっとぐらいいいじゃない。
⇒ 反省につながりにくい

【ファンBさんの気持ち】
- 納得できる理由。
- 好きなタレントさんを嫌な気持ちにさせてしまった。
⇒ 反省の気持ち
断る理由で、「相手の責任」、「相手に注意・批判」を伝えてしまうと、断られたことだけでも滅入っているのに、気持ちのぶつけどころがなくなり、あなたに対して「恨みつらみ」の感情が芽生えるでしょう。
また、「お店に迷惑だから」、「みんな見ているから」のように「その他の責任」にしてしまうと、ファンBさんが「その他」に対して迷惑をかけているという理由となり、ファンBさんが悪者になってしまいます。
タレントAさんは、「なんでこんなことするんですか?」、「データ消してください」などの 怒りや注意を伝えたのではなく、「自分の気持ち」を「自分の言葉」で伝えたのです。
このように、断る時は、相手が納得できる理由を述べることが大切です。
また、断る理由を伝える時には、「自分の気持ち」を伝えましょう。それには「私」が主語になります。
「自分の気持ち」は自分だけが伝えることのできる唯一無二の理由ですから、相手も相手自身の気持ちに振り替えることができるでしょう。
③ さらに、タレントAさんは「握手だったらいいですよ」と、対応しました。
希望を絶たれたファンBさんの気持ちは晴れません。
そこでタレントAさんは、相手の気持ちを大切にしたのです。

断った後に相手の気持ちを思いやったり、相手の希望をくみ取ったりすることは、とても素晴らしい行動です。
是非お手本にしたいですね。
次の、「断ることは難しい2」では、ビジネスシーンを例にしました。
こちらも是非ご覧ください。
→断ることは難しい2 ~ビジネス編~

おまけ ~ファンBさんへ~
今回は、タレントAさんの気持ちを考えずに、いきなり撮影してしまったことが一番悪いことですよね。
断る時に、相手が「納得できる理由」が必要なように、お願いするときにも、相手が「納得できる理由」が必要なのです。それを飛び越えて、いきなり写真を撮るのはマナー違反でしたね。
「今日中に田舎に帰るので、記念に写真を撮らせてもらえないかしら?」とか、「家族みんながあなたのファンなの」とか。その理由は絶対に真実でなくてはいけませんが。
「なぜあなたに頼みたいのか」を真摯な気持ちで伝えると、相手は「断る理由」との優先度を考えなおしてくれるようです。あくまでもおまけですが…。
きっと、タレントAさんなら、「じゃあ、お店の外で」と言ってくれますよ!!
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